参照したのは「我が国の防衛と予算-平成22年度概算要求の概要-」(防衛省平成21年8月発行、現在は防衛省HPから削除されています)です。平成21年10月22日現在、防衛省HPで見れる「我が国の防衛と予算−平成22年度概算要求の概要【ポイント】−」と基本的に同じですが、要求額や調達数量などが一部異なります。
ただ、詳細が書かれているので以前の資料を参照しました。

まず、注目すべきはレーザー兵器の研究開始。これはTHELのような近接防御用のようです。
SAMのように複数車両に分散搭載すことや艦船に搭載することを考えているようです。ただ、艦船に搭載する場合、消費電力の問題がありますから、既存艦艇に搭載するのは難しいと思われます。
実際問題として、現状で搭載可能なのはCOGLAG推進を採用している試験艦「あすか」程度ではないでしょうか?
米海軍のDD(X)のように将来光学兵器を搭載することを前提にした設計でなければ(DD(X)は統合電気推進)既存艦艇への搭載は難しいと思われるので、このあたりは護衛艦の推進方式もからめて検討が必要になるでしょう。

これまで手が付けられていない(と思われていた)F-2の能力向上改修。研究ではなくいきなり実機改修のようです。
まぁ、AAM-4の搭載は当初から予定されていたことでしょうから、元から何らかの措置がとられていたのかもしれません。J/APG-1の改修のほうは、アクティブフェーズドアレイレーダーの研究の中で得られた成果をフィードバックするってことではないでしょうか?
海のFCS-3や陸の新中SAMにも使われている技術なわけですから。
何かといわれることの多いF-2ですが、頑張ってもらいたいと思います。
けど、このレーダー能力の向上ってアメリカのAESAみたいな電子戦能力を付与するとかそういうことは含まれるんでしょうか?それとも単に探知能力の向上だけなんでしょうか?後者のような気がしないでもないです。
今後の更なる能力向上にも期待したいところです。

というか、F-15の改修とはバラバラなのかよと。
どう考えてもまとめてやるほうが効率がいいと思うのですが。と思ってよく見てみたら、さすがに両方同時に行うようです。
さすがにそうですよねぇ。
けど、搭載レーダーをAESAにしないのはなんで?まぁ、多分予算の問題でしょうが。
けど2機で66億円(現在公開されている要求のポイントのほう)って結構な額ですよね。電子戦のシステムを総入れ替えするからでしょうか。しかし、もとの要求では4機110億円であることを考慮すると、2機と4機でも量産効果に違いがあるということでしょうか。

ESM、レーダー、IRSTの情報を総合して敵機(ステルス機)を探知するシステムの戦闘機(F-15?)と大型機(P-1?)用のものです。
大型機のほうはステルス機というよりも、弾道ミサイル、巡航ミサイルに対処するためのシステムと言えるかもしれません。
大型機用の光学センサーは以前から研究していたAIRBOSSのようですね。レーダーは低空目標の探知能力が(自衛隊が想定したよりも)高いと言われるFCS-3の研究成果を流用するのでしょうか。

そして、注目の22DDH。「改16DDH」という大方の予想を裏切り、大幅な大型化に踏み切りました。それと引き換えにFCS-3改やVLSの装備を行わないなどかなり思い切った策がとられています。
予算を16DDH並に抑えるための措置でしょうが、それなら、なぜ速力を削らなかったのか?というのも問題になります。
艦隊運動にあわせるためだと思われますが、この手の船が災害派遣や国際緊急援助で大きな力を発揮することを考えれば、迅速に被害現場に駆けつけることのできる速力は一概に無駄な能力だと切って捨てることもできないのは事実です。
しかし、それをガスタービンに拘る必要があるのかといった点や本当に30ノットでないといけないのか、という点は検討されたのかはわかりません。
いずれにせよ、船体の大きさや「ひゅうが」でも水線下のデザインでかなり苦労した点を考慮すると、LM2500を4基で実現できる速力ではないでしょう。そのへんも含めて検討したのかは聞こえてきません。
また、海自が固定翼機搭載の野心も持っているのか(サイズ的には16DDHでも搭載できなくは無い)、またそれを前提とした強度やエレベーターが設置されるのか、このへんはF-Xも絡めた議論が必要になってくるでしょう。

次期装輪装甲車ファミリーの先駆けになると思われるNBC偵察車です。
なんか、自衛隊の装甲車っぽくないなぁという印象を抱いたのは私だけでしょうか?色のせいですかね?
というか、相変わらず底が平らなように見えるんですが。
それなりに車高はあるようですが、果たして・・・。

前からあーだこーだと言われながらあんまり進んでない無人機のこと。
とりあえず国産のは開発続行なんですね。自分で離着陸するタイプを目指すんでしょうか?いずれにしても、事前に決めたコースを高速で飛行するタイプなんでしょうね。
グローバルホーク導入とかなんとか騒いでた話はどうなったんでしょう?これを見る限りまだ調査団を派遣する段階のようですが。

自前の通信衛星を持つための研究に着手するっていう解釈でいいんでしょうか?
国外に出て行く以上、どうしても必要な装備ですから「いまさら・・・」という印象が拭えませんが、何もしないよりはましでしょう。
他にもTK-Xの調達開始とか、UH-60JAの防弾板とかいろいろ見所はありますが、あんまり長くなってもあれなので、このへんで。
【関連する記事】
こういう実際のレーザー砲って、“火砲”というよりは特殊な大型の“計測機器”って感じですね。
怪獣映画に登場したパラボラ光線砲や、かのガンダムのビームライフルとはさすがに全く違うデザインです。この“レーザー兵器”の現実世界への登場により、今後こういうSF映像作品のメカデザインがどのように変わっていくのか、興味深い所です。