
その結果、UH-Xのベース機はベル412EPIとなることが濃厚です。(写真は海保の412EP)
が、そこで捻くれ者の私はひとつ気になったことがあります。それは、412EPを提案したことになっている富士・ベル連合ですが、公式には「なにをベースに」提案したのか一切情報がでていないことです。
「国内企業と海外企業が共同で行う民間機の開発と並行して実施する」
これが防衛省がUH-X選定に掲げた条件です。それゆえに川崎・エアバスは「新規開発」を提案したわけです。実際この2社の共同開発は、セールスで国際的に成功を収めたBK117の実績がある、というか米軍もUH-72AとしてBK117を採用しているわけですが、「既存機の改造開発」とした富士・ベルは412EPIをベースに開発して民間市場で需要があるのか?ということです。
結局、富士重工が自衛隊専用機を開発・製造するだけになる気がひしひしとするわけです。
さて、ここで少し見方を変えて「富士・ベル連合は実は412EPIではない機種を提案した」可能性を探ってみましょう。
実のところベルのヘリコプターラインナップはエアバスのそれほど豊富ではありません。特に最近はV-22に偏ってるように見えます。そして、現行機種の中では412が最大の機体で、それ以外はパイロット以外に5〜6人程度の小型の機体ばかりです。
これではそもそも選択肢が412しか無いように見えますが、実はひとつだけあります。

それがこの525です。民間機で初めて操縦系統を完全にデジタルフライバイワイヤ化した機体で「ちょうど開発中」で、しかも2015年7月、つまり今月初飛行したところという実機もちゃんとある最新機体です。
ここで富士がいっちょ噛みできれば、防衛省専業と言われる富士のヘリコプター部門にも光がさすわけです。
最新鋭機ということで将来性もありますし、選択肢として悪くないと思われます。
まぁ、そんなこと言ったところで525がベース機になることはまずないでしょう。
それは悲しいかな値段の問題です。金食い虫のV-22を調達しつつCH-47とUH-60JAを維持するとなると、必然的にUH-Xの調達にかけられる金額は限られます。そのためにわざわざ条件に「1機12億円程度」なんていう文言が入れられてるわけです。
で、525のお値段ですが、ベル本家のサイトを漁ってみた限り15〜20億円くらいは固いと思われます。ちなみに412EPIやBK117といった機体は概ね5〜8億円程度のようです。これなら軍用に改造しても12億円以内におさまりそうですね。
なんで525がそんなにするのかというと、実は525のエンジンに原因があります。出力でいうならUH-60やUH-1Y、AS332に相当するような高出力エンジンを搭載した機体なのです。これは、洋上プラントへの人員物資輸送の需要を見越して開発している機体なので、高速・大積載を目指したためである。
よって、やっぱり選択肢は412EPIしかないわけなので、もうしばらく陸自のヘリは見慣れた形が続きそうである。残念。
ちなみに、UH-1Jが120機に対してUH-Xの調達予定が150機と言われているので、どうもOH-6もUH-Xでまとめて、足りないのはUAVで補うつもりなのでしょう。
ちなみに、よくUH-1Yと412EPIが同じみたいな書き込みを某掲示板で見かけることがありますが、wiki見ればすぐわかりますがUH-1Yはエンジン出力が412EPIの倍ある完全に別の機体です。開発が難航したのも納得のパワーアップです。
なので、412EPIがUH-Xに決まったのはAH-1Z採用の伏線!みたいなのは完全に的外れです。UH-1Yを採用しないとAH-1Zを採用するメリットはありません。というわけで、陸自はもう攻撃ヘリ諦めたとみるのが妥当なのではないかと。
UH-Xがトラブルなく配備されることを祈りましょう。
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